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運動部会

牛の代表的な蹄病

釧路西部事業センター 阿寒釧路家畜診療所
獣医師 小笠原 一憲

 乳牛の跛行は牛群において乳房炎、繁殖障害に次いで収入減の要因と言われており、中でも蹄病は乳牛の跛行原因の7割以上を占めると言われています。蹄病は牛の健康や泌乳量、繁殖成績に深刻な影響を与え、治療費も含め、経済的に大きな損失を与えます。そのため、日頃から定期的に削蹄を実施することで、常に良好な蹄形を維持することが重要となります。前回の運動器部会の記事では、牛の蹄を自分で削蹄する方法(ダッチメソッド)についてご説明しましたが、今回は牛の蹄の構造や代表的な蹄病についてご紹介します。

〇蹄の構造(図1、2)
 牛の蹄は、図1のように蹄底の角質(牛の爪の外側の硬い部分)が蹄真皮(爪の下の柔らかい部分)を保護し、肢が地面につく際に分布しており、蹄底の角質に向かって細胞の増殖や角質への変化が起こることで、蹄が伸びていきます(矢印①)。角質は1か月におよそ5mm伸びると言われています。蹄壁は、蹄冠の下あたりの蹄真皮から細胞の増殖と角質への変化が起こり、下方向に伸びます(矢印②)。図1、2のように蹄壁と蹄底の交わる部分は白帯(白線結合部)と呼ばれ、他の部位に比べて脆弱であり、小石等が入り込み、感染の侵入口となってしまう可能性があります。



 代表的な蹄病としては表1 のように、蹄の病変では蹄底潰瘍、白帯病が多く、趾皮膚の病変では趾皮膚炎(DD)、趾間フレグモーネが多いと言われています。
表1

〇蹄の異常
蹄底潰瘍(写真1)
 地面の突起物の刺激や、蹄の過長による蹄角度の悪化によって蹄骨が蹄真皮を圧迫すること蹄葉炎による蹄真皮の損傷等が原因で生じ、蹄角質の形成不全や欠損を起こします。蹄底潰瘍は蹄真皮の損傷によって起こるため、角質と蹄真皮が分離する白帯病よりも治癒が遅く、慢性的な軽度の跛行が残ることが多いといわれています。



図3のように後肢の外側蹄に頻発し、前肢の内側蹄にも時折みられます。治療には、蹄真皮から浮いた角質を除去する必要があります。病変の程度によっては、対側の蹄にゲタを装着する必要があります。


白帯病(写真2)
 脆くなった白帯に小石などが穿孔して蹄真皮に到達することで、細菌感染、膿の貯留が起こり、蹄真皮を圧迫し疼痛が生じる病気です。図3のように後肢の外側蹄反軸側の蹄踵に近い部位で最も多くみられます。同部位に発生が多い理由は、接地する際に蹄壁に力がかかるため、白帯が離開して脆くなるためと言われています。一度膿が溜まると蹄底に抜けるのは難しく、治療せずにいると蹄冠部まで坑道を作って抜けることがあります。治療の際は、蹄底潰瘍と同様に蹄真皮から浮いた角質を除去する必要があります。


〇趾皮膚の異常
趾皮膚炎(DD)(写真3)
 以前はイボ状皮膚炎(PDD)と呼ばれていましたが、最近は趾皮膚炎(DD)と呼ぶのが一般的になっています。図3のように蹄踵付近の趾間に多くみられますが、前方の蹄冠の付近にみられることもあります。治療としては基本的に病変の切除はせず、乳房炎軟膏等の外用薬の塗布が一般的です。患部をきれいに洗浄した後、外用薬を塗布し、粘着包帯を巻き、4、5日後には包帯を外します。外用薬としては、オキシテトラサイクリンやリンコマイシンなどが多く用いられています。また、予防としては蹄浴が行われており、適切に実施することで大きな効果をあげます。


趾間フレグモーネ(趾間ふらん)
(写真4)
 軟らかい趾間皮膚にできた傷口から細菌が侵入し、繋や球節の化膿や壊死を起こします。主な症状は蹄冠部や繋部の腫脹、発赤、熱感です。突然一肢で跛行を示し、肢間の腫脹のため、蹄の間が広がります。趾間皮膚に割れたような傷がみられることが多く、体温の上昇がみられることもあります。治療には抗生物質の投与が必要となりますので、発見次第獣医師に診療を依頼してください。
写真4

 蹄病は定期的な削蹄や蹄浴などで予防可能な病気が多く、日頃の観察やケアで発生率を下げることが可能です。また、跛行している牛を発見した場合は、なるべく早く原因をつきとめて治療を行うことでその牛の予後が大きく変わってきます。少し跛行が気になったら、肢を挙げて蹄形を整えつつ、病変を見つけることで蹄病の早期治療に繋がればと思い、今回の記事を書かせていただきました。もし、跛行の原因がわからない場合や手に負えなさそうな病変を発見した場合、最寄りのセンター・診療所の獣医師にご連絡ください。

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